M&A用語集
M&Aに関する業務をアドバイザリー会社や仲介会社に依頼する際に締結する契約。 売り手企業(譲渡企業)と買い手企業(譲受企業)がそれぞれにアドバイザリー会社や仲介会社と締結する。 M&Aでは、情報漏洩リスクを防止するため、一般的に1社のアドバイザリー会社や仲介会社と専属専任契約を締結する。
意向表明書とは、基本合意を締結する前に、買い手企業(譲受企業)から売り手企業(譲渡企業)へ買収の意向を表明する書面のことを指す。 一般的には、売り手企業(譲渡企業)の財務情報の開示や代表者同士の面談を終えた後に、買い手企業(譲受企業)より提示する。売り手企業(譲渡企業)が意向表明書の条件に合意した場合は、基本合意に進む。 意向表明書は英語で「Letter of Intent」の頭文字を取り、LOI(エルオーアイ)と呼ぶこともある。
インカムアプローチとは、将来期待される経済的利益を、その利益実現に見込まれるリスク等を考慮した割引率で割引くことにより企業価値を評価する方法のこと。主な手法としては、将来のフリーキャッシュフローを算定して評価するDCF法、株主が受け取る配当額から評価する配当還元法などがある。
M&Aにおける営業権とは、買収価格で時価純資産に上乗せする部分の価格のこと。 一般的に収益力が高いほど営業権が高くつく傾向にあるが、収益性が低ければ、時価純資産割れのマイナスの営業権となることもある。
企業概要書とは、秘密保持契約を交わした買い手候補企業に対し開示される売り手企業(譲渡対象企業)の詳細情報のことである。 英語で「Information(情報の) Memorandum(メモ)」の頭文字を取り、IM(アイエム)と呼ぶこともある。 企業概要書には、企業の沿革、経営者の略歴、事業内容や財務状況等、売り手企業(譲渡企業)の詳細な情報が記載されている。 企業概要書の役割としては、正確な情報と譲渡対象企業の魅力を買い手候補企業に伝える、買い手候補企業がM&Aの実施判断を行う、交渉進行時の破談リスクを極力軽減する、などがある。
基本合意とはM&Aプロセスのひとつである。 売り手企業(譲渡企業)の財務情報の開示や代表者同士の面談を終え、M&Aを進めることを双方で合意をすることを指す。 基本合意の際は基本合意書を締結する。基本合意書には、買収価格や財務内容の表明保証、今後の進め方などM&Aに関して大まかな条件等について合意した内容を記載する。 最終契約前の仮契約として位置づけられており、法的拘束力を持たせる部分(秘密保持、基本事項等)と持たせない部分(買収条件、取引内容等)を設けるケースが一般的である。
吸収合併とは、一方の法人格のみを残し、他方の法人格を消滅のうえ、合併により消滅する会社の権利義務の全部を、合併後存続する会社に承継させる手法。
クロージング(決済)とは、最終契約書に基づきM&Aを実行し、株式の譲渡や譲渡代金の支払いを完結させることを指す。 クロージングに伴い、役員の変更、重要物品の引渡、株主名簿の書換え等をまとめて行うことが一般的である。
コストアプローチとは、貸借対照表の純資産の時価評価額等を基準に株主資本価値を算定する評価手法のこと。 主な手法としては、簿価純資産法、時価純資産法の2つがある。中小企業の企業価値算定においては、コストアプローチが重視される傾向がある。
時価純資産とは、時価評価した資産から、時価評価した負債を控除したものであり、実態純資産ともいう。
事業譲渡とは、会社の株式を譲渡するのではなく、会社の事業のうち必要な事業のみを売買するM&Aの手法。
デューデリジェンスとは、買い手企業(譲受企業)が売り手企業(譲渡企業)を買収するべきかどうか判断するために「企業の正しい価値」や「想定されるリスク」、「期待できる収益性」などを調査して評価する買収監査を意味する。 英語で「Due(適切な) Diligence(注意)」であり、頭文字をとって「DD(ディーディー)」と読んだり、「デューデリ」を略す場合もある。 具体的には、基本合意後、買い手企業(譲受企業)がM&Aを実行する前に、交渉の過程で提示された情報が正しいかを調査するため、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、人事デューデリジェンス、事業デューデリジェンスなど、さまざまな観点で実施する。 デューデリジェンスは法的な義務ではなく、買い手企業(譲受企業)が買収するかの最終判断を行う為の調査で、対象になる売り手企業(譲渡企業)によって調査項目は異なる。精度を高めるために、税理士・会計士・弁護士等の専門家に依頼する場合が多い。
ネームクリアとは秘密保持(NDA)締結後に、買い手候補者に対して売り手企業の社名等を開示すること。
ノンネームシートとは、売り手企業名が分からないように、企業概要を匿名にして簡易的にまとめた資料を意味する。 ノンネームシート以外にも「ティーザー(Teaser=「焦らす」という意味)」という表現も使用される。 情報漏洩リスクを可能な限り排除するため、ノンネームシートに記載する事項は、業種やエリア、売上高の概算等に限定する。 買い手候補者がノンネームシートを見て関心を持った場合、秘密保持契約(NDA)を結び、売り手企業の企業概要書などを見て具体的な検討に進む。
バリュエーション(Valuation)とは、売り手企業(譲渡企業)の価値を評価することである。 株式譲渡の場合、端的に言うと、株価算定のことである。 M&Aにおけるバリュエーションには様々な手法がある。 将来獲得すると期待される利益やキャッシュ・フローなど収益力をベースに評価するインカムアプローチ、評価対象会社の純資産をベースに評価するコストアプローチ、類似した上場会社や類似した取引などをベースに類似会社や類似取引と比較することで評価するマーケットアプローチの三種類が主な手法である。
表明保証とは、売り手企業が買い手企業に対し、最終契約の締結日や譲渡日等において、対象企業に関する財務や法務等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するもの。 表明保証の対象事項は、株式に関する事項等から契約締結能力・権限、反社会的勢力からの断絶、許認可の取得等まで幅広い事項にわたる。M&A後に表明保証した事項が真実でなかったことに起因し、相手方に損害が生じた場合には、損害賠償責任に応じる必要がある。
マーケットアプローチとは、対象会社と類似する上場企業の財務状況を参考に企業価値を評価する方法のこと。 主な手法としては、市場株価法、類似会社比較法などがある
レーマン方式は、M&Aのアドバイザリー会社や仲介会社に支払う成功報酬金額を定める時に利用される一般的な方式である。 取引された金額に応じて、一定の報酬料率を掛けて、手数料を算出する。
EBITDA(イービットディーエー/イービットダー)は、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」の略で、企業価値評価の指標です。日本語で「利払い前、税引き前、減価償却前」や「金利、税金、償却前利益」などのような意味となりますが、とくに決まった訳語はなく、簡易的には営業利益に減価償却費を加えて計算します。これは、純利益に対する「税率や、借入金利、減価償却費」の扱いがそれぞれ国によって異なるので、この違いを最小限に抑えて「国際的な企業価値の比較や評価」をする場合に、EBITDAが利用されます。
EBITDAは決まった計算式があるわけではなく、目的に応じていくつかの計算方法が存在します。 EBITDA=営業利益+減価償却費 EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費 EBITDA=税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費 EBITDA=当期純利益+法人税等+特別損益+支払利息+減価償却費
SPAとは、株式譲渡契約書の英語表現であるStock Purchase Agreementの略称です。M&Aにおいて、売手企業と買手企業が、株式の譲渡その他諸条件に合意すれば、M&Aに関する最終契約書となる株式譲渡契約書(SPA)を締結します。株式譲渡契約書は、相対取引で株式を取得するM&A取引を行う場合などで作成されるのが一般的です。
NDA(秘密保持契約)とは、企業が他の会社や相手に大切な秘密情報を教えるときに、その情報を守るための契約です。NDAは、特に業務提携先や共同研究先に対して経営情報・技術情報・顧客情報・個人情報などの秘密情報を提供する場合にお互いの信頼を築くために使われます。秘密保持契約書を締結することで、情報が漏洩したり使われたりすることを防ぐことができます。
NDAとは「Non-Disclosure Agreement」の略で、日本では「秘密保持契約」または「機密保持契約」とも呼ばれています。「秘密保持契約書」、「機密保持契約書」どちらも守秘義務に関する契約で基本的に同じ意味です。また、NDAのことを「CA(Confidentiality Contract)」[シーエー]という表現も一般的に使用されます。
M&AのMは英語のMergersの頭文字で、Mergersは「合併」を意味しています。AはAcquisitionsの頭文字で、その意味は「買収」です。 つまり、M&Aとは、英語のMergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)の略語であり、複数の会社を一つに統合する合併と、会社の支配権(経営権)を手に入れる買収のことを指しています。
MBO(マネジメント・バイアウト)の意味で、現経営陣や経営に関与しているクラスの人が、株式を買い取って経営権を取得することをいいます。主な目的としては、経営体制の見直しや上場廃止などです。MBOでは、本業とのシナジー効果が弱い事業や会社について経営陣に経営権を取得させ、その対価として資金を手に入れます。売却側は資金獲得と経営のスリム化が図れるため、本業に集中できるというメリットがあります。また中小企業でも、後継者が見つからないときに、MBOが行われている例があります。MBOのスキームは、会社の幹部に引き継がせるときに会社を売却し、経営者にその対価を支払うという流れです。
Discounted Cash Flowの頭文字を取った略称であり、日本語では割引キャッシュフロー法とも呼ばれています。不動産の資産価値を鑑定評価する際に用いられる手法の一つである、収益還元法を用いる際に使用される算出方法の一つのことです。なお、収益還元法とは、不動産がもつ収益を基準として、その不動産の資産価値を求める方法のことです。 DCF法では、将来保有が見込まれる期間に応じて、当該期間中に生まれるであろう各年における将来的な純収益に割引率と呼ばれる現在価値に換算するためのレートを乗じることで、各年の将来収益の現在価値を求め、さらに、保有期間が終了となり当該物件を将来売却する際の価格に同じく割引率を乗じることで、将来的な売却額を現在価値へと換算します。算出した各年の純利益と売却額を合算した価額がDCF法における物件の現在の資産価値となります。 収益還元法には、DCF法の他に直接還元法と呼ばれる算出方法がありますが、直接還元法はDCF法よりも簡易な計算方法で資産価値が算出されるため、主に不動産投資信託においては、直接還元法ではなくDCF法を用いて現在の資産価値を算出されることが一般的になっています。
PMIとは、企業がM&Aを行う際に、初期段階で統合阻害要因などに対して事前検証を行う、検証の結果をもとに統合後にそれを反映させて組織統合マネジメントを進めることで、「Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション」の略です。PMIの重要なテーマは、企業文化の違いをどのようにマネジメントするか。M&Aによるシナジー効果の度合いはこのPMIをうまく行うかどうかにかかっているといわれています。PMIとは企業がM&Aを行う際の事前検証を指し、M&Aのシナジー効果の度合いはPMIの巧拙にかかっています